離婚による財産分与について

離婚による財産分与について

夫婦が離婚する場合に,財産分与が行われることがあります。

財産分与とは,一言でいうと,夫婦が協力して築いた財産を離婚の際に分けましょうという制度です(実際には,清算的要素,扶養的要素,慰謝料的要素があるとされます)。一般的には,2分の1ずつ分ける例が多いです。

重要なことは,夫婦が婚姻中に協力して築いた財産でなければならないということです。

つまり,結婚前から持っている財産とか結婚後に取得した財産でも親からの相続財産などは財産分与の対象にはなりません。

例えば,会社員の夫と専業主婦の夫婦がいたとして,給料をこつこつ貯金してきてそれなりの額の貯金があるとするとどうでしょうか?

お金を稼いだのは夫だから分ける必要はないでしょうか?

そんなことはありません。夫が仕事をしてお金を稼ぐことができたのは専業主婦である妻の支えがあったからです。ですからこれは夫婦で築いた財産と考え,財産分与の対象となります。

さて,それでは,会社員の退職金はどうでしょうか?

退職金というのは長年会社に勤務したことに対する対価ですので,やはり,妻の支えがあってこそ,もらえるものですよね。ですから,一応財産分与の対象となると考えていいです。

ただし,問題なのは,退職金をもらうのがいつかという点です。

例えば,離婚直前に夫が定年退職をして退職金を受領していたとすれば,財産分与の対象となります。まさに目の前にお金がある状態ですから,それを分けることになります。

もっとも,注意して欲しいのは,必ずしも退職金の全額が財産分与の対象になるのではなく,「夫婦で協力して築いた財産」が対象なので,夫が会社に務めていた期間のうち,婚姻期間の割合に限られるという点です。

例えば,勤続40年で退職した人がいたとして,結婚したのが勤続10年経過後であれば,婚姻中の勤続期間は30年ですから,退職金のうち40分の30だけが財産分与の対象になります(その2分の1を妻がもらう)。

では,例えば夫が40代で,定年はずいぶん先というケースはどうでしょうか。

そんな先の話になると実際にもらえるかどうか分かりません。転職する可能性もあるし,会社が倒産することもありますので。

ですから,裁判実務では,そういう場合には,退職金を財産分与の対象とはしない扱いが多いです。

逆に,近い将来にほぼ確実に退職金を得られるという場合は,財産分与の対象とすることが多いです。

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