【判例解説】遺言による特別受益について黙示の持戻免除の意思表示を認定するには明確な意思表示が必要とされた事例

【判例解説】遺言による特別受益について黙示の持戻免除の意思表示を認定するには明確な意思表示が必要とされた事例

事案の概要

(事案を簡略化して説明します。)

被相続人Hは多数の土地を所有していました。Hは公正証書遺言を作成し、同遺言において所有不動産のうち一部(本件不動産)のみについて長男Aに相続させる旨を記載していました。

Hが死亡し、Hの法定相続人は、長男A、二男B、三男C、四男Dの4人でした。

Aが遺言により相続した本件不動産の評価額は7000万円であり、遺言に記載されていないHの不動産の評価額の合計額は1億円でした。

Aは、本件不動産の取得について被相続人による黙示の持戻し免除の意思表示が認められると主張しました。

裁判所と裁判年月日

裁判所:大阪高等裁判所
裁判年月日:平成25年7月26日

本件の争点

本件において、遺言書には持戻しを免除する旨の記載はありませんでした。

仮に、本件において、Aの本件不動産の取得について持戻しの免除が認められると、Aは7000万円の本件不動産の他に2500万円相当の遺産(1億円÷4)を取得できることになり、他の相続人の取得額(各2500万円)と多大な差が生じてしまうため、容易に持戻し免除の意思表示を認めてよいかが問題となりました。

結論

大阪高裁は、「抗告人(A)に対する特別受益は本件遺言によるものであるところ、本件遺言には持戻免除の意思表示は記載されていない上、仮に遺言による特別受益について、遺言でなくとも持戻免除の意思表示の存在を証拠により認定することができるとしても、方式の定められていない生前贈与と異なり、遺言という要式行為が用いられていることからすれば、黙示の持戻免除の意思表示の存在を認定するには、生前贈与の場合に比べて、より明確な持戻免除の意思表示の存在が認められることを要すると解するのが相当である。また、(中略)本件の場合、被相続人が相続開始時点で有していた財産の価額に占める特別受益不動産の価額の割合は四割であることからも、黙示の持戻免除の意思表示の存在を認定するには、民法の相続人間の公平の要請を排除するに足りる明確な持戻免除の意思表示の存在が認められることを要するものと解するのが相当である。」と述べて、持戻し免除の意思表示の存在を認めませんでした。

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