相続放棄とは、相続人が被相続人の権利義務の承継を拒否する意思表示のことです。
そうだとすると、被相続人に関連する財産は一切受け取れないようにも思えます。
しかし、相続放棄をしても受け取れる財産もあります。
生命保険金は生命保険契約に基づいて受取人が保険会社から直接受け取るものであって、受取人固有の財産とされています(最高裁昭和40年2月2日判決)。
したがって、生命保険金は「相続財産」ではないため、相続放棄をしても受け取ることができます。
しかし、生命保険の受取人が被相続人に指定されている場合は「被相続人の財産」=「相続財産」ということになるので、相続放棄をすると生命保険金を受け取ることはできません。
死亡退職金はそれが「相続財産」か否かで結論が異なってきます。
被相続人が国家公務員や地方公務員の場合、死亡退職金は遺族固有の権利であり相続財産ではないとされています。
民間企業の場合は、死亡退職金に関する支給既定の有無や従来の支給慣行等により相続財産かどうかが判断されます。
相続財産でないと判断される場合は、遺族固有の権利ということになるので相続放棄をしても受け取ることができます。
(詳しくはコラム「死亡退職金は相続財産か」をご覧ください。)
未支給年金については、それぞれの制度で法令によって受給権を有する遺族が決まっているので「相続財産」ではなく遺族の「固有財産」とされています(最高裁平成7年11月7日判決)。
したがって、相続放棄をしても未支給年金を受け取ることができます。
遺族年金は残された遺族の生計を維持するためのものですので「相続財産」ではありません。
そして、未支給年金と同様に法令によって遺族年金を受け取れる人が決まっています。
したがって、法令により受給権者に該当する人は、相続放棄をしても自己の固有の権利として遺族年金を受給することができます。
祭祀財産とは「系譜」「祭具」「墳墓」の3つのことを指します(民法897条1項)。
祭祀財産については、民法では通常の相続財産とは別に定めており、祭祀承継者が承継することとされています。
したがって、相続放棄をしても、その人が祭祀承継者であれば祭祀財産を承継することになります。