【判例解説】財産を「全てまかせる」との遺言は包括遺贈の趣旨であると判断した事例

【判例解説】財産を「全てまかせる」との遺言は包括遺贈の趣旨であると判断した事例

事案の概要

(事案を簡略化して説明します。)

遺言者Hは妻Aと施設で暮らしていました。H夫婦の子は、長女B、二女C、三女Dの3人がいました。

BはH夫婦が暮らす施設の近くに住んでおり、H夫婦のもとをしばしば訪れてH夫婦の世話をしていました。

Hは、「財産については私の世話をしてくれた長女のBに全てまかせます」との自筆証書遺言を作成した後、死亡しました。

裁判所と裁判年月日

裁判所:大阪高等裁判所
裁判年月日:平成25年9月5日

本件の争点

財産を「全てまかせる」との記載のある遺言について、財産を「全て与える」という意味と解釈すべきかが本件の争点です。

結論

大阪高裁は、

「本件遺言書には、『私が亡くなったら財産については私の世話をしてくれた長女のBに全てまかせますよろしくお願いします』と記載されているところ、本件遺言の解釈にあたっては、この文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者である亡Hの真意を探求すべきものであり、本件遺言書作成当時の事情及び亡Hの置かれていた状況などを考慮して、本件遺言の趣旨を確定すべきであると解される(最高裁判所昭和58年3月18日判決・最高裁判所裁判集民事138号277頁参照)。」と、過去の最高裁判例を引用したうえで、

「亡Hは、平成15年2月から、妻Aと共に、大阪府河内長野市内に所在するZ(施設のこと)に入居し、本件遺言をした平成17年11月11日当時もZに入居していたが、Zに入居中の亡H夫婦のもとをしばしば訪れて、その世話をしていたのは専ら大阪府河内長野市内に居住するBである。他方、D夫婦は、亡H夫婦との関係が円滑さを欠くようになったため、生駒の自宅を出て、亡H夫婦と別居した後は、亡H夫婦と疎遠な関係になり、本件遺言がされた当時は、ほとんど交流が途絶えていた。また、Cも、遠方に居住している関係で、年二、三回程度しか亡H夫婦のもとを訪れることができなかった。そのような事情があったため、本件遺言をした当時、亡Hが亡H夫婦の世話や亡H死亡後のAの世話を頼めるのはBしかおらず、亡Hは、Bを信頼し、頼りにしていた。(中略)このような本件遺言書作成当時の事情及び亡Hの置かれていた状況にかんがみると、『私が亡くなったら財産については私の世話をしてくれた長女のBに全てまかせますよろしくお願いします』という本件遺言は、Dが主張するような遺産分割手続を委せるという意味であるとは考え難く(本件遺言が遺産分割手続をすることをBに委せる趣旨であるとすると、そもそもそのような遺言は無意味である。)、亡Hの遺産全部をBに包括遺贈する趣旨のものであると理解するのが相当である。」

と判示して、本件遺言はBに全ての財産を与える意味であると結論付けました。

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