【判例解説】遺産確認の訴えについて確認の利益を肯定した事例

【判例解説】遺産確認の訴えについて確認の利益を肯定した事例

事案の概要

(事案を簡略化して説明します。)

被相続人Hが死亡し、Hの法定相続人は、長男A、長女Bの2人でした。

Hは相続開始時において甲土地及び乙土地を保有していましたが、その他に、もともとH名義であったがHの生前にHから第三者Cに登記名義が移転している丙土地(本件土地)が存在しました。

本件土地について、AはHの遺産であると主張していましたが、BはHの遺産ではないと主張していました。

そこで、AはBを被告として、本件土地がHの遺産に属することの確認を求めて訴えを提起しました。

裁判所と裁判年月日

裁判所:最高裁判所第一小法廷
裁判年月日:昭和61年3月13日

本件の争点

特定の財産が遺産であるかどうかについて争いがある場合、当該財産について、自己の法定相続分に応じた共有持分権確認の訴えを提起することによって紛争が解決するようにも思えます。

そこで、共有持分権確認の訴えの他に、「遺産確認の訴え」を認める必要があるのか(確認の利益)が問題となります。

結論

最高裁は「本件のように、共同相続人間において、共同相続人の範囲及び各法定相続分の割合については実質的な争いがなく、ある財産が被相続人の遺産に属するか否かについて争いのある場合、当該財産が被相続人の遺産に属することの確定を求めて当該財産につき自己の法定相続分に応じた共有持分を有することの確認を求める訴えを提起することは、もとより許されるものであり、通常はこれによって原告の目的は達しうるところであるが、右訴えにおける原告勝訴の確定判決は、原告が当該財産につき右共有持分を有することを既判力をもって確定するにとどまり、その取得原因が被相続人からの相続であることまで確定するものでないことはいうまでもなく、右確定判決に従って当該財産を遺産分割の対象としてされた遺産分割の審判が確定しても、審判における遺産帰属性の判断は既判力を有しない結果、のちの民事訴訟における裁判により当該財産の遺産帰属性が否定され、ひいては右審判も効力を失うこととなる余地があり、それでは、遺産分割の前提問題として遺産に属するか否かの争いに決着をつけようとした原告の意図に必ずしもそぐわないこととなる一方、争いのある財産の遺産帰属性さえ確定されれば、遺産分割の手続が進められ、当該財産についても改めてその帰属が決められることになるのであるから、当該財産について各共同相続人が有する共有持分の割合を確定することは、さほど意味があるものとは考えられないところである。これに対し、遺産確認の訴えは、右のような共有持分の割合は問題にせず、端的に、当該財産が現に被相続人の遺産に属すること、換言すれば、当該財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める訴えであって、その原告勝訴の確定判決は、当該財産が遺産分割の対象たる財産であることを既判力をもって確定し、したがって、これに続く遺産分割審判の手続において及びその審判の確定後に当該財産の遺産帰属性を争うことを許さず、もって、原告の前記意思によりかなった紛争の解決を図ることができるところであるから、かかる訴えは適法というべきである。」と述べて、遺産確認の訴えの確認の利益を認めました。

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