(事案を簡略化して説明します。)
被相続人Hは平成5年11月10日死亡しました。
Hの法定相続人は、実子Aと養子Bでした。
Hは、昭和63年7月20日に公正証書遺言(本件遺言)を作成しており、その内容は全ての財産をBに遺贈するというものでした。
Aは、平成6年2月9日、遺言執行者から本件遺言の写しの交付を受け、自身の遺留分が侵害されている事実を知りました。
Aは、同年9月11日、Bに対し、「貴殿のご意向に沿って分割協議をすることにいたしました。」と記載した普通郵便を送付し、Bはこれを受領しました。
Aは、同年10月28日、Bに対し、遺留分減殺の意思表示を記載した内容証明郵便を発送しましたが、Bが不在のために配達されず、留置期間の経過により返送されました。
そして、遺留分を請求できる時効期間(1年)が経過しました。
なお、終始、Aは本件遺言の効力を争っていませんでした。
裁判所:最高裁判所第一小法廷
裁判年月日:平成10年6月11日
AはBに対し、遺留分を請求できる期間内に遺産分割協議を申し入れる旨の意思表示を行っています。この意思表示の中に遺留分減殺請求の意思表示が含まれるかが問題となります。
なお、本裁判では、遺留分減殺請求の意思表示の記載のある内容証明郵便が受取人不在により返戻された場合に意思表示が到達したといえるか、という争点も含まれておりますが、本稿では省略します。
最高裁は「遺産分割と遺留分減殺とは、その要件、効果を異にするから、遺産分割協議の申入れに、当然、遺留分減殺の意思表示が含まれているということはできない。しかし、被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合には、遺贈を受けなかった相続人が遺産の配分を求めるためには、法律上、遺留分減殺によるほかないのであるから、遺留分減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれていると解するのが相当である。」と述べて、破棄差戻しとしました。