被相続人Hは、平成4年に生命保険に加入しました。
生命保険の受取人は、当初、Hの長女AとHの長男Bの両名としていましたが、平成30年にAのみに変更しました。
Hは令和元年に死亡し、Aは死亡保険金530万円を受領しました。
Hの遺産総額は2360万円でした。
遺産分割調停及び審判において、Bは平成16年の最高裁決定を引用して、Aが受領した死亡保険金について、特別受益に準じて、保険料総額(192万円)の限度で持ち戻すべきだと主張しました。
裁判所:東京高等裁判所
裁判年月日:令和6年8月29日
平成16年の最高裁決定は、「保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人の関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して」「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合」には、「特別受益に準じて持戻しの対象となる」と述べています。
上記「特段の事情」があるといえるかが本件の争点です。
東京高裁は、遺産の総額2360万円に対して死亡保険金の額は530万円であり、遺産総額に対する比率は約22.5%であること及びその他の事情を考慮すると、「Aが本件保険の死亡保険金を取得したことによって、AとBとの間に、民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しい不公平が生じたとまではいえない。」として、持戻しを否定しました。