今回は生前贈与と家族信託の違いについて説明します。
生前贈与は、少しでも遺産を減らしておいて相続税を節約する目的で行う場合や、将来の認知症を心配して、早めに子どもに財産管理を任せるために行う場合などがあります。
しかし、普通に財産を贈与すると贈与税がかかります、贈与税は相続税よりも税率が高いため、節税の観点からはあまり好ましくありません。「相続時精算課税制度」の利用も考えられますが、利用には限度額があります。
また、家族で会社を経営している場合、株価が低いときに株式を子どもに贈与したいと考える経営者がいますが、株式を贈与してしまうと会社に対する支配権を失ってしまうという問題点があります。
逆に、判断能力が鈍ってきたので、早く子どもに会社の実権を委譲したいのだけれども、今、株式を贈与すると株価総額が高いために高額な贈与税が発生してしまうという場合もあります。
このような場合、家族信託が有効です。
まず、家族信託は、「委託者」から「受託者」へ信託財産の名義を移転しても、「委託者」=「受益者」であれば贈与税は発生しません。
ですから、「委託者」と「受益者」を自分として、「受託者」を子どもとして不動産などの財産を信託すれば、贈与税がかからずに不動産の管理運営を子どもに任せることが可能です。
会社の株式については、株価が低いので株式を子どもに贈与したいが、会社の支配権をまだ渡したくないという場合には、「委託者」兼「受託者」を自分として、「受益者」を子どもとして信託を組成すれば、株式の財産的価値のみが子どもに移転しますが、会社の支配権(議決権)は自分の元に残せます。
逆に、株式をすぐにでも子どもに渡したいが株価総額が高額であるという場合には、「委託者」兼「受益者」を自分として、「受託者」を子どもとして信託を組成すれば、贈与税が発生しない形で、支配権を子どもに委譲することができます。この場合、議決権行使は子どもが行うことになります。