【判例解説】再転相続人の相続放棄

【判例解説】再転相続人の相続放棄

事案の概要

(事案を簡略化して説明します。)

被相続人H1が死亡しました。H1は不動産を所有しており(以下「本件不動産」)、H1の相続人はH2とAでした。H1の相続に関する熟慮期間中にH2が死亡しました。

ところが、H1の死亡とH2の死亡の間に、H2の債権者が本件不動産のH2の持分2分の1について仮差押決定を得ていました。

H2の相続人であるBは、まず、H1の相続について相続放棄の申述を行い、次にH2の相続について相続放棄の申述を行いました。いずれの相続放棄も家庭裁判所に受理されました。

Aは、BによるH1の相続についての放棄により、H2はH1の相続人ではなかったことになるのであるから、債権者の行った仮差押は無効であるとして、仮差押登記の抹消を求めて提訴しました。

裁判所と裁判年月日

裁判所:最高裁判所第三小法廷
裁判年月日:昭和63年6月21日

本件の争点

民法916条は、再転相続の場合の熟慮期間の特則を定めていますが、同条は単に熟慮期間の特則を定めたにすぎないのか、それにとどまらず、第一次相続と第二次相続のそれぞれについて承認又は放棄の選択を行う機会を保証する趣旨を含むのかが本件の争点です。

すなわち、本件において、BはH1の相続とH2の相続についていずれも放棄していますが、結局、H2の相続を放棄するのであればH1の相続について放棄を認める意味はないと考える(債権者の主張)のか、BにはH1の相続とH2の相続のそれぞれについて、承認又は放棄をする機会を与えると考える(Aの主張)のか、という問題です。

結論

最高裁は「民法916条の規定は、甲の相続につきその法定相続人である乙が承認又は放棄をしないで死亡した場合には、乙の法定相続人である丙のために、甲の相続についての熟慮期間を乙の相続についての熟慮期間と同一にまで延長し、甲の相続につき必要な熟慮期間を付与する趣旨にとどまるものではなく、右のような丙の再転相続人たる地位そのものに基づき、甲の相続と乙の相続のそれぞれにつき承認又は放棄の選択に関して、格別に考慮し、かつ、承認又は放棄をする機会を保証する趣旨をも有するものと解すべきである。」と述べた上で、「丙が乙の相続につき放棄をしていないときは、甲の相続につき放棄をすることができ、かつ、甲の相続につき放棄をしても、それによっては乙の相続につき承認又は放棄をするのに何ら障害にならず、(後略)」と述べて、民法916条は単に熟慮期間の特則を定めただけではなく、第一次相続と第二次相続のそれぞれについて承認又は放棄の選択を行う機会を保証する趣旨を含むとの見解を示し、BによるH1の相続放棄の効果を認めました。

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