【判例解説】相続開始後に遺産を売却した場合の売却代金は遺産分割の対象となるか

【判例解説】相続開始後に遺産を売却した場合の売却代金は遺産分割の対象となるか

事案の概要

(事案を簡略化して説明します。)

被相続人Hが死亡し、法定相続人はAとBでした。

Hの遺産の中に本件各土地が含まれており、AとBは本件各土地を第三者に売却しました。Aはその売却代金の受領をBに委任し、Bは代金を受領したにもかかわらず、Aに交付しませんでした。

そこで、AはBに対して、委任契約に基づく受任者の受取物引渡義務(民法646条)の履行として金銭の交付を求めて民事訴訟を提起しました。

これに対し、Bは、本件土地の売却代金は遺産であるから、遺産分割の審判を経ないで民事訴訟において金銭の支払いを求めることはできないと主張しました。

裁判所と裁判年月日

裁判所:最高最大一小法廷
裁判年月日:昭和54年2月22日

本件の争点

相続開始後に相続人が遺産を処分した結果、売却代金に代わった場合(代償財産といいます)、代償財産は遺産として遺産分割の対象となるのかが本件の争点です。

結論

最高裁は「共有持分権を有する共同相続人全員によって他に売却された右各土地は遺産分割の対象たる相続財産から逸出するとともに、その売却代金は、これを一括して共同相続人の1人に保管させて遺産分割の対象に含める合意をするなどの特別の事情のない限り、相続財産には加えられず、共同相続人が各持分に応じて個々にこれを分割取得すべきものである」として、売却代金は遺産分割の対象となる財産ではないとの判断を示しました。

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