【判例解説】相続開始後に認知された者が価額支払請求をした事例

【判例解説】相続開始後に認知された者が価額支払請求をした事例

事案の概要

(事案を簡略化して説明します。)

被相続人Hは平成18年10月7日に死亡しました。

Hの妻A、Hの子B,C,Dは平成19年6月25日、Hの遺産分割協議を成立させました。この時点において、遺産の評価額は約18億円でした。

Eは、平成21年10月、EがHの子であることの認知を求める訴えを提起し、Eの請求を認容する判決が言い渡され、同判決は平成22年11月に確定しました。

Eは、平成23年5月6日、A,B,C,Dに対し、民法910条に基づく価額の支払を請求しました。この時点において、遺産の評価額は約8億円でした。

Eは、平成23年12月、訴訟を提起しました。第一審は平成25年9月30日に、第二審は平成26年2月3日に、それぞれ口頭弁論を終結しました。第一審の口頭弁論終結の時点において、遺産の評価額は約10億円でした。

裁判所と裁判年月日

裁判所:最高裁判所第二小法廷
裁判年月日:平成28年2月26日

本件の争点

本件の争点は、民法910条に基づく価額支払請求に関して、
ⅰ)どの時点を基準として遺産の価額を算定するのか
ⅱ)いつから価額支払債務が履行遅滞になるのか
の2点です。

結論

最高裁は、争点ⅰ)について、
「相続の開始後認知によって相続人となった者が他の共同相続人に対して民法910条に基づき価額の支払を請求する場合における遺産の価額算定の基準時は、価額の支払を請求したときであると解するのが相当である。なぜならば、民法910条の規定は、相続の開始後に認知された者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしていたときには、当該分割等の効力を維持しつつ認知された者に価額の支払請求を認めることによって、他の共同相続人と認知された者との利害の調整を図るものであるところ、認知された者が価額の支払を請求した時点までの遺産の価額の変動を他の共同相続人が支払うべき金額に反映させるとともに、その時点で直ちに当該金額を算定し得るものとすることが、当事者間の衡平の観点から相当であるといえるからである。」と述べて、遺産の価額算定の基準時は、EがAらに対して価額の支払を請求した日である平成23年5月6日であると判示しました。

また、争点ⅱ)については、
「また、民法910条に基づく他の共同相続人の価額の支払債務は、期限の定めのない債務であって、履行の請求を受けた時に遅滞に陥ると解するのが相当である。」と述べて、遅延損害金の起算日は、EがAらに対して価額の支払を請求した日の翌日である平成23年5月7日であると判示しました。

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