(事案を簡略化して説明します。)
遺言者Hは、「甲不動産はAに相続させる。乙マンションはAとDに名義を変えてBが管理してください。」という旨の自筆証書遺言(本件遺言)を作成した後、死亡しました。
Hの法定相続人は、Hの子A、Bでした。
Aには子C(Hの孫)がおり、Bには子D(Hの孫)がいました。
Hの死後、Aは、乙マンションにつき、Bとの間でAの単独所有とする遺産分割協議を行った上で、第三者に売却しました。
その後、Aが死亡し、CはAがHから甲不動産を相続したことを前提に、甲不動産につき相続登記を経由しました。
裁判所:東京地方裁判所
裁判年月日:平成27年7月16日
Aが本件遺言を隠匿して欠格事由があった場合、CはAが遺言により取得するはずであった遺産を代襲相続するか。
東京地裁は「『相続させる』旨の遺言をした遺言者は、通常、遺言時における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるものと解されるから、『相続させる』旨の遺言は、相続人に欠格事由があった場合には、当該『相続させる』旨の遺言に係る条項と遺言書の他の記載との関係、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれた状況などから、遺言者が、上記の場合には、当該相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である(最高裁平成23年2月22日判決参照)。」と過去の最高裁判決を引用した上で、本件においては、「亡Hが、亡Aが本件遺言書を隠匿した場合を想定し、その場合に、亡Aが承継すべきであった遺産をその代襲者に相続させる旨の意思を有していたと認めることはできないから、上記特段の事情があるとはいえず、本件遺言のうち亡Aに対する遺言の部分は効力を生じない」と結論付けました。