代襲相続と寄与分

代襲相続と寄与分

被代襲者の寄与行為を代襲相続人は主張できるか?

寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をした相続人が、貢献の程度に応じて、より多くの遺産を受け取れる制度です。

そして、原則として、寄与分が認められるためには相続人自身による行為(貢献)が必要だとされています。

それでは、代襲相続の場合に、被代襲者の寄与行為を代襲相続人は主張できるのでしょうか。
代襲相続人「自身」の貢献ではないので問題となります。

学説

この点、学説としては「代襲相続人は被代襲者に代わって被代襲者の相続分を受けるものであるから、被代襲者が生存していたなら主張できたはずの寄与分を主張することができる」との肯定説が通説のようです。

裁判例

裁判例においては、最高裁の判断は見当たりませんが、例えば、東京高裁平成元年12月28日決定では、

「寄与分制度は、被相続人の財産の維持又は増加につき特別の寄与をした相続人に、遺産分割に当たり、法定又は指定相続分をこえて寄与相当の財産額を取得させることにより、共同相続人間の衡平を図ろうとするものであるが、共同相続人間の衡平を図る見地からすれば、被代襲者の寄与に基づき代襲相続人に寄与分を認めることも(中略)許されると解するのが相当である。」

と述べており、肯定説を採用しています。

代襲相続人が寄与行為をした場合、寄与行為の時期を問わず寄与分を主張できるか?

上記の話とは別に、代襲相続人自身が寄与行為をした場合について、寄与行為の時期を問わず寄与分を主張できるかという論点があります。
寄与分を規定した民法904条の2第1項が「共同相続人中に」との文言を使用していることから問題となります。

厳密に言えば、代襲原因が生じる前(被代襲者が生存しているとき)は代襲相続人は推定相続人ではありません。
代襲原因が生じた後(被代襲者の死亡後)に代襲相続人は推定相続人となり、被相続人の相続開始によって代襲相続人は法定相続人となります。

そのため、「代襲原因が生じる前の寄与行為は主張できないが代襲原因が生じた後の寄与行為は主張できる」との考え方もあり得ます。

しかし、通説は、共同相続人間の公平を図るという寄与分制度の趣旨を重視すべきこと、遺産分割の時点では「共同相続人」であるので条文の文言に反するとはいえないことから、「代襲原因の前後を問わず全ての寄与行為について寄与分を主張できる」としています。

この点は、代襲相続人が得た特別受益が持戻しの対象となるか否かの論点と扱いが異なるので注意が必要です(コラム「代襲相続と特別受益」参照)。

まとめ

代襲相続の場合に、代襲相続人は被代襲者の寄与行為を主張できると考えられます(通説及び高裁判例)。

代襲相続人自身が寄与行為を行った場合には、代襲原因の前後を問わず寄与分を主張できるとするのが通説です。

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