こんにちは。宝塚花のみち法律事務所の弁護士木野達夫です。
遺産分割審判において、療養看護や経済的な援助(扶養義務の履行)を寄与分として主張する場合があります(コラム「長年親を介護してきたのに寄与分は認めらないのか」参照)。
仮に、遺産分割審判において寄与分が認められなかった場合、改めて扶養料の求償を他の相続人に対して請求できるでしょうか。
この点について判断した判例として、大阪高裁平成15年5月22日決定があります。
同決定の基本的な考え方は、寄与分の手続きと扶養料の手続きは別物だというところにあります。
すなわち、同決定は、
「遺産総額が少ない場合には、そもそも寄与分制度を通じて過去の扶養料を回収することはできないし、寄与分審判の審理においては、一般に、過去の扶養料の求償権の有無及び金額を定める上で極めて重要な要素となる同順位扶養義務者の資力が調査されることはなく、その資力を考慮して寄与分が定められることもない。」
と判示し、寄与分の審理と扶養料の求償の審理とでは審理内容が異なることを指摘しています。
そして、上記の理由より、
「寄与分審判によっては、過去の扶養料の求償に関する適切な紛争解決が必ずしも保障されているとはいえないから、過去の扶養料の求償を求める場合には、原則として、扶養審判の申立てがされるべきであるといわなければならない。」
と、改めて過去の扶養料の求償に関する審理を求めることができると判示しています。
もっとも、以前のコラム「被相続人の扶養料を他の相続人に請求できるか」で記載したように、過去の扶養料の求償を請求する場合、民事裁判ではなく家庭裁判所で行う必要があります。
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宝塚花のみち法律事務所 弁護士木野達夫