相続分の譲渡とは、自分の法定相続分を他の人に譲ることであり、遺産全体に対する共同相続人の包括的持分又は法律上の地位を譲渡することを意味します。
共同相続人の1人が他の共同相続人に対し、自身の相続分を譲渡した場合の効果について、具体例でみていきましょう。
【具体例】
被相続人が亡くなり、法定相続人は妻、子A及び子Bとします。
法定相続分は、妻:1/2、子A:1/4、子B:1/4です。
子Aが子Bに対し自身の相続分を譲渡した場合、
妻の相続分は変わらず1/2です。
子Aの相続分1/4が子Bに移転するので、子Bの相続分は1/4+1/4=1/2となります。
相続分の放棄とは、遺産に対する自身の共有持分権を放棄する意思表示のことです。
相続分の放棄の効果については、放棄した者の相続分が他の相続人に対して相続分に応じて帰属するという見解と、相続放棄と同様に扱う見解(コラム「相続放棄と相続分の放棄の違い」参照)があります。
実務においては、放棄した者の相続分が他の相続人に対して相続分に応じて帰属するという見解が有力であり、以下ではこの見解に基づいて具体例について検討します。
上記の例と同様に、被相続人が亡くなり、法定相続人は妻、子A及び子Bとします。
法定相続分は、妻:1/2、子A:1/4、子B:1/4です。
この場合、子Aが相続分の放棄をした場合、子Aの法定相続分1/4が他の相続人に対して相続分の割合に応じて配分されます。
すなわち、妻と子Bの相続分の比は、1/2:1/4=2:1です。
したがって、子Aの相続分1/4を、妻と子Bに対し2:1の割合で配分することになり、
妻に対して1/4×2/3=1/6を加算し、
子Bに対して1/4×1/3=1/12を加算する
ことになります。
結果としての相続分は、
妻:1/2(元の相続分)+1/6(加算分)=2/3
子B:1/4(元の相続分)+1/12(加算分)=1/3
となります。
なお、「相続分の放棄」と「相続放棄」は全く異なる概念ですので注意してください(コラム「相続放棄と相続分の放棄の違い」参照)。
相続分の譲渡とは、自分の法定相続分を他の人に譲ることであり、他の相続人に譲渡した場合、譲渡を受けた相続人は譲渡した人の相続分だけ相続分が増加することになります。
相続分の放棄とは、遺産に対する自身の共有持分権を放棄する意思表示のことであり、実務の有力説によれば、放棄した者の相続分が他の相続人に対して相続分に応じて帰属することになります。
なお、「相続分の放棄」と「相続放棄」とは全く別の概念ですので注意が必要です。